リードクライマーなら持っておきたいスリングの選び方

2020年3月21日 11:13 am

Category:確保器/山道具/クライミング/ギア/クライミングの知識 /  Write:ワルツ /  Tag: / / / / /

クライミングフィールドが広いほど役に立つスリング

スリングとは別名シュリンゲといい、クライマー墜落時の衝撃にも耐える輪状の紐テープです。
ボルダリングでは、ほとんど見る機会もありませんが、登山者やリードクライマーなら必ず持っておきたいギアです。

何にでも使える万能紐のスリング

スリングは強度に優れた万能紐です。
カラビナとセットで使うケースが一般的ですが、多くのクライミングフィールドで使われるクライミングギアです。

スリングの使い道

スリングの使い道は、あげればキリがありません。 使い方はアイデア次第で無限大です。

  1. 長いクイックドローが作れる
  2. 流動分散の終了点を作ることができる
  3. 簡易ハーネスが作れる
  4. セルフビレイがとれる
  5. ギアラックになる
  6. プルージックでアッセンダーとして使える
  7. 岩や木と連携し支点にできる
  8. お助け紐として
  9. 熊との遭遇時ヌンチャクとして牽制できる
流動分散の終了点をスリングで作る

スリングの選ぶポイント

スリングを選ぶにあたり、以下がポイントとなります。

  1. 形状
  2. 素材
  3. 長さ
  4. 太さ
  5. 結び目

形状の種類

スリングは、平たいテープタイプと円形のロープタイプがあります。

テープタイプ

市場に出回っているスリングのほとんどはテープタイプで、柔らかく巻き付けやすいのが特徴です。
カラビナはもちろん、自然物の岩や木にも巻き付けやすいです。
テープタイプは長さも素材も種類が豊富です。

ロープタイプ

ロープタイプは、ロープと相性が良いのでロープと連携して使うケースが多いです。
テープタイプより素材に関しては豊富です。
ロープタイプでは外皮の摩擦力を高めたプルージック用スリングなども販売されています。

スリングの素材

テープ形状のスリング素材は、ナイロン製とダイニーマ製がほとんどです。
素材については、良い悪いという視点よりは、このシチュエーションの場合はこの素材という観点で選ぶべきです。

#ナイロン製ダイニーマ製
メリット 安価 熱に強い(摩擦熱) 太くて握りやすい 太いので心理的に安心感が得られる 細いので携帯時にかさばらない 岩の鋭角に強い 同じ強度ならナイロンより軽く作れる(水に浮く) 水を含みにくい(凍結防止:冬季アルパインに向いている) ビレイシステムがスッキリ見える
デメリット 重い かさばる 水を含む(冬季に凍り付く) 衝撃吸収しない 熱に弱い(摩擦熱) 細くて握りにくい
特性 若干衝撃吸収する(伸びる) 若干滑りにくい素材 衝撃吸収しない(伸びない) 滑りやすい素材

ナイロン素材

ダイニーマーに比べ、大きく重くなりがちなナイロン製スリングですが、握りやすさ熱に強い面で選ぶクライマーも多い素材です。
ダイニーマーより若干衝撃吸収に優れるので支点で利用したり、貧弱なプロテクションとの連携、セルフビレイなどに向いています。

ダイニーマー素材

ナイロンに比べ、軽く強度もあり携帯性に優れるので、ナイロンより人気があります。
ただし、熱に弱い(摩擦熱)、細くてツルツルしているので掴みにくい、細いので精神衛生上不安など、ナイロンより優位になれない部分もあります。

軽くてかさばらないので、アルパインクライミングのように沢山携帯する必要がある場合、利点が出てきます。
またナイロンに比べ、水に耐性があるので凍り付きを防止できることからアルパイン、アイスクライミングに向いています

スリングの長さと太さ

スリングの長さ

スリングは60、120、180、240と60cm間隔で商品展開されています。※30cmもあります。
60cmはカラビナと連結してクイックドローを作成する場合に便利です。
120~240cmの利用用途として、セルフビレイや流動分散の支点作りが主な使い方になってきます。

大きいサイズほどかさばりますので、ダイニーマ製のものを選んだほうが良いかもしれません。(ダイニーマの短所を理解して選択してください)

スリングの太さ

スリングの太さは様々ですが、ナイロン製は太く、ダイニーマ製は細い傾向があります。
ダイニーマ製の中でも10mm以下の細いタイプがあり、ハーケンなどの小さな穴に通したり、工作しやすいので持っておいたほうがよいでしょう。

スリングの結び目

輪状になっていないスリングを結ぶタイプソウンタイプ(縫い付けて輪状になっている)があります。
自分で結んだタイプは、切り売りで買ったスリングの端同志を結びます。
ソウンタイプは、初めから端同志を縫い付けてあるタイプで、こちらが主流です。

結び目は強度が落ちますし、ヒューマンエラーによる結び方の失敗などがありますので、ソウンタイプのほうが安全でお勧めです。

スリングの強度

スリングはUIAA規格のものであれば、衝撃荷重22KNまでの強度に耐えるという前提で販売されています。
UIAA規格については、スリングにタグが付いているのでタグを見ればわかります。

スリングは見た目が細くて心細いですが、安全なシチュエーションでしたら、人の落下程度で切れることはありません
ですが、使用環境によっては破損することは考えられます。
衝撃荷重時に破損する原因としては

  • 凍り付いている
  • 繊維への砂の混入している
  • 紫外線で劣化している(経年劣化)
  • 荷重がかかった時に鋭角に接している
  • ピックなど鋭利な道具で傷ついてしまっていた

上記の例は、通常の状態に比べて破損しやすいだろうという仮説ですが、実際問題になるケースは少ないように思えます。
ですが、命を預けるケースが多いスリング、取り扱い(メンテ)には慎重になったほうがよいでしょう。
特に残置スリングは、大量の紫外線を浴びているので危険で、切れると思っているぐらいが良いと思います。

スリングは実際何本必要か?

スリングは長さ別に持っていると便利です。
多くのクライマーは、まず60cmと120cmを各1~2本ずつ程度揃えます。
60cmは長いクイックドローを作れますし、120cmはセルフビレイ用や流動分散支点作成に役立つからです。

180cmからは120cmではセルフビレイが届かない場合や、流動分散の角度がきつくなるといった理由で使うケースが多いと思います。
アルパインクライミングでは180cm以上のスリングが場合によってはあっても良いかと思いますが、スポートクライミングルートで非常い長いスリングが必要になることはほとんどありません

スリングの携帯方法

スリングは、輪状になっているので、適当に携帯すると登攀に足が挟まったり、ギアと絡まったりと最悪事故になることがあります。
以下携帯する時の結び方をご紹介します。

チェーンノット

難しそうに見えますが、同じことを繰り返すだけの結び方で簡単ですが、比較的時間がかかると思います。
結んだ後は綺麗で、携帯性と柔軟性に優れます。

棒結び

棒結びはクルクル巻くだけなので、チェーンノットより早く巻くことができます。
結んだ後は、若干硬さが出るので長いスリングだと移動時に振られてしまいます。

ねじり式

カラビナにかけたスリングを適当にクルクル巻いて再び、カラビナにかける方法。
一番雑な方法ですが、現場では綺麗に巻けないので、このまとめ方になるケースが多いです。
一番シンプルな結び方で早く結べますが、一番かさばります。
また使うときに、カラビナのゲートを開ける必要があります。

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